一年を振り返るゆとりもないまま新年を迎えて、そろそろ1月も終わる。
年がら年中留守がちの私だが、年の暮れはさすがに家にいる。
いつもと同じようにぶーぶー文句をいいながら大掃除をして、おせち料理を作って、年が明ければ家族揃ってのんびりと過ごす。そんな年末年始を、ここずっと過ごしている。
そのなかで年賀状やクリスマスカードが少し変わってきた。ガーナ、ポルトガル、ヨルダン、カンボジア、タイ、フィリピン、マレーシアなど海外からの便りが増えているのだ。インターネットのおかげで世界がぐんと近くなっている。
ヨルダンは首都のアンマンからで、相当に寒いという便り。彼はイラク戦争で被害を受けた子どもたちの医療支援のために日本とアンマンを行ったりきたりして、新年をアンマンで迎えた。ポルトガルからはリスボン長期滞在の学生時代からの友人で、どうやら快適な暮らしをしているようだ。ガーナに十三年もいる友人は、ガーナ大学で日本語を教えている。タイにいる若い友人は、ゾウ使いの修業をしてついにソムチャイ(私が乗ったゾウの名前)のゾウ使いと結婚してしまったという。遠い国々からのさまざまな便りを読んでいると、改めて自分の生き方を振り返ってみようという気になってくる。
そんな年の初めだが、今年はどんなことになるのだろうか。何をしたいのだろう。
まずは映画をみようと思っている。いま、アフリカの事柄に強い関心をもっているから、アフリカを描いた映画だけは見逃さないようにしている。昨年は「ホテル・ルワンダ」と「ナイロビの蜂」をみたし、10日には「ダーウィンの悪夢」という映画を観にいった。
タンザニア・ケニア・ウガンダにまたがるビクトリア湖にいるナイルパーチという魚の問題をテーマにしたドキュメンタリー映画なのだが、ナイルパーチという魚をこの映画で初めて知った。レストランでフライやソテーとして出される白身魚がそうだという。スズキの仲間で2メートルにもなる魚だが、ビクトリア湖で大量繁殖して生態系を壊している張本人だ。
ビクトリア湖は面積では世界第2(九州の2倍)の淡水湖で、かつては生物多様性の宝庫で「ダーウィンの箱庭」とよばれていた美しい湖だった。
ところが、1954年に食用の目的でナイルパーチが放流された。それからこの魚は爆発的に増えていき在来種のほとんどを絶滅させてしまった。
それだけではない。ビクトリア湖の湖畔には一大魚産業が誕生し、人間の暮らしをも一変させたのである。加工され冷凍されたナイルパーチのフィレ肉は、世界中に行き渡り、一昨年の日本の輸入量は、約2500トンで欧州連合(EU)に次ぐ量だという。
こうしてはるばると船で運ばれてきたフィレ肉は、ホテルのバイキング、飛行機の機内食、大型テーマパークのレストラン、ファミリーレストラン、学校給食など、あらゆるところで使われている。
きっと、私もどこかで食べているはずだ。
問題はナイルパーチの是非ではない。農村から人びとが町に押し寄せ、その結果、貧富の差が拡大され、売春やエイズ、ストリートチルドレンなどの社会問題が深刻になってきたのだ。この地域の伝統的な漁業や水産物の加工も衰退し、湖の恩恵で暮らしていた人びとの社会は荒廃した。
10000キロも遠く離れたアフリカの話として片づけるわけにはいかない。「おいしい」と言いながら食べているのは地元の人たちではなく、私たちなのだから……。
たくさんの人に観てほしいのに、フランスなどではナイルパーチのボイコット運動が起きているというのに、映画館はがら空きだった。
来月に入ったら「ルワンダの涙」をみようと思っている。
昨年日本での上映が実現し話題になった「ホテル・ルワンダ」は、フツ族のホテル支配人の行動を描いたものだったが、この映画は白人の視点から、フツ族によるツチ族のジェノサイドを描いたものだ。
20日から、ケニアのナイロビで「第7回世界社会フォーラム」が開催されている。多国籍企業主導のグローバル化や新自由主義経済に反対して、公正で平和な社会を目指そうと百カ国以上の人びとが集まっている。
アフリカは、最後に辿り着くところになるだろうと、ここ数年の間に想いが募っている。何故なのか、はっきりした答えはわかっていない。どんな形で辿り着くのかもわからない。最近『新書アフリカ史』という本を手に入れた。〈人類が誕生し、無数の民族と国が興亡した黄金の大地の新しい歴史像〉と書かれたこの本を、これから少しずつ読んでいくつもりだ。
映画は好きなのに、出かけるのがおっくうで、つい見逃しているのだが、今年は年の初めから、私にとって「観なければならない」映画が目白押しに控えている。
20日には「不都合な真実」が公開された。映画のタイトルは「地球温暖化問題」を表している。京都議定書の受け入れを拒否しているアメリカの政治家にとっては、まさに“不都合な真実”なわけで、ゴア元副大統領の講演を中心に構成されていて、ビジュアルにしかもユーモアたっぷりに温暖化問題をわかりやすく説得力をもって伝えているらしい。ほかにも観たいのは「グアンタナモ 僕達が見た真実」。2006年ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞した映画だ。好奇心でアフガニスタンに出かけた青年達が、タリバンと間違えられ、地獄の収容所グアンタナモ基地に収監されてしまう。実際に起きた事件を当事者へのインタビューを通して再現したドラマだという。
映像のもつ力や影響力ははかりしれない。
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