環境新聞「地球タイムス」連載
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この星に生けるものたち
アフリカ編・第4回
アイアイ
アフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶマダガスカルは、世界で4番目に大きな島だ。おおむかし、大陸移動で孤立したこの島の生きものたちは、気が遠くなるような時の流れのなかで、独特の変化をとげてきた。
サン・テク・ジュぺリの『星の王子様』で有名になったバオバブの木、4億年前の姿そのままで生きているシーラカンスなど、世界的に知られている。
日本で有名なのが「アイアイ」というサルだ。どうしてかというと、それは童謡の世界の話で、自分も子育てをしていたときに、子どもたちとしょっちゅう歌っていた。
「アイアイアイアイ」と繰り返しながら、「南の島」「しっぽの長い」といった歌詞がはいっている。単純なメロディーだが「アイアイ」という心地いい語感が、子どもにも受けたのだと思う。
このアイアイは体長40センチメートルの島固有のサルで、1780年にフランス人探検家によって発見された。
このとき、いっしょにいた現地の人が「アイアイ」といったのを、動物の名前と勘違いして、命名してしまったらしい。実際には「アイアイ」というのは、驚いたときに発する現地の言葉だった。
夜行性で中指の爪が異様に長く、見た目に少しグロテスクなアイアイは、「悪魔の手先」として嫌われているらしい。「中指で指さされたものは、その日のうちに死んでしまう」と言い伝えられていた。だから、指さされる前に攻撃してしまえ、ということで見つけ次第殺された歴史があるともいわれている。
人間が気味悪がっているこの中指だが、アイアイは、これで木の表面をコツコツとたたく。幹をつたい歩きながらコツコツ、コツコツ、そうしては中にいる虫をみつけだすのだそうだ。
アイアイがどんなサルかも知らないで、ただやさしく心地いい響きで、歌っていた。
今、マダガスカルの森林は、2000年前にくらべて80パーセントが消えてしまった。
それでもまだマンタディア-ザハメナ回廊地帯といわれるところには、原生林がある。ただ豊かな森林は、同時に破壊の対象にもなっている。焼き畑農業や伐採の被害は、確実にすすんでいる。
この星に生けるものたち
アフリカ編第5回
ジャクソンカメレオン
カメレオンというのは不思議な生きものだが爬虫類は苦手なのであまり関心をもたなかった。
種類だってそう多くはないだろうと思っていたのに、アフリカだけでもけっこうたくさんのいるのに驚く。
なかでもアフリカが故郷なのに、ハワイ・オワフ島で生きているというジャクソンカメレオンに興味をもった。
このカメレオンの原産地は、ケニアやタンザニアの森。ほとんど樹上で暮らし、交尾や排卵以外に地上におりることはまずないらしい。
ジャクソンカメレオンの大きさは、15〜30センチ。額と鼻先から3本の角がつきでている。眼はとても大きくて外につきだしているが、瞳以外は体と同じ皮膚でおおわれているという。
ふだんは葉っぱの生い茂った木で暮らしているせいか、体も明るい緑色だ。だが、なんらかの原因でストレスをうけると、黒味がかった緑色に変わるといわれている。
カメレオンは、周囲の環境にあわせて体の色を変えることで知られている。
ジャクソンカメレオンは、天敵の鳥や蛇が近づいたときには、防御行動としてじっと動かず、そのときはくすんだ茶色に変色する。写真でみていると、ごつい顔つきのわりにはなんだかユーモラスにみえるから親しみがわいてくる。
ペットとして人気があるのが分かるような気がする。小売価格で7万円以上するらしいが、これが飼育されているのが、アフリカから遠く離れたハワイ・オワフ島なのだ。
1972年、ペットショップのオーナーが販売目的で36匹運んだのが発端といわれている。子孫は繁栄しアメリカ本土や日本に輸出されていった。だが、飼育が難しいとされ、輸出中の長旅に耐えられるのは10匹に1匹だという。
このジャクソンカメレオンは、ワシントン条約によって絶滅危惧種に指定されている。ケニアやタンザニアの森が開発され、ペットとして乱獲されたからだ。
現在、ハワイ州政府は、持ち出しを禁止しているというが、実際には、インターネット上などで入荷情報があるのだから、闇取引はなくなっていない。
この星に生けるものたち
アフリカ編第6回
チンパンジー
今年の2月、アフリカ・ケニアでおこった出来事。ナイロビの空港で、木箱に詰め込まれた密輸のチンパンジーの子ども6頭が発見された。他にも4頭のオナガザルがいっしょにいたという。
彼らはケニヤを経由して、エジプトからナイジェリアに密輸されるところだった。発見されたときには飢えのあまり自分の糞まで食べていて、そのうちの1頭は飢えとストレスで死んでしまったという。
闇市場で取引されるチンパンジーの値段は、1頭20,000ドルという。
チンパンジーが生息しているのは、アフリカ大陸の赤道に沿った地域。熱帯雨林や、サバンナ、川辺にひろがる森などで生息が確認されている。
亜種も、ナイジェリアチンパンジー、東アフリカ地域のシュベインフルティ・チンパンジー、中央アフリカ地域のトログロディティス・チンパンジーと西アフリカ地域にいるベルスチンパンジーの4亜種にわかれている。
チンパンジーは絶滅危惧種に定められているが なかでも絶滅の危険が高いのが、ギニア共和国の森林に生息するベルスチンパンジーだ。
ここは世界に残されているもっとも豊かな森のひとつだが、同時に、世界に25ヵ所ある、生物多様性が脅かされている地域に指定されているところでもある。
ギニア共和国の東南部にあるボッソウ村。
村に暮らすマノン族の人たちは、昔からチンパンジーと共生してきた。彼らは自分たちのことを「チンパンジーの生まれ変わりで、森に入るとチンパンジーに変身する」といっているのだという。
村人たちは、家ごとにトーテムという特別な存在をもっている。最初に村をつくった家族のトーテムがチンパンジーで、だから後からやってきた住民も、その一族に敬意をはらってチンパンジーを守るようになったということだ。村人は、チンパンジーが畑の果物をたべても追い払わないで、ただ眺めているだけ。
ボッソウは、人間とチンパンジーが同じ森の資源を分け合い、いっしょに暮らすという意味だそうだ。
この村で長年、チンパンジーの生態研究をしている京都大学霊長類研究グループは、ギニア政府や日本政府の援助をうけて、村人といっしょにチンパンジー保護のための「緑の回廊」計画を進めている。
この星に生けるものたち
アフリカ編第7回
カバ
アフリカの水辺で生きるカバの巨体は、ゾウとはちがう存在感がある。
一晩で約45キロもの農作物をたべることができるそうだ。カバが激減してしまったのは、流域の肥沃な土地を人間に奪われたり、密漁のせいだという。カバの牙は、置物やアクセサリーの原材料になるのだそうだ。
これまでアフリカの絶滅しかかっている生き物たちを取りあげてきた。ゾウもサイも、ゴリラやチンパンジーも、どの生きものも、アフリカから遠く離れた私達に、とてもなじみのある生きものたちばかりなのだが……。
なじみがあるといっても、それは動物園でみているから親しみを感じるといったものでしかない。
かつて「野生の王国」ともいわれたアフリカは、いま世界がかかえている問題の核心地である。貧困、飢餓、内戦、エイズ、どれもこれもアフリカが背負い込んでいる。
野生生物も軒並み絶滅しかかっている。アフリカの問題が解決できれば、地球の問題も解決される、そういっても過言ではない。
ガーナ北西部のウェチアウは人里離れたサバンナで、ワラ族、ダガ族、ロビ族の3つの部族4500人の人びとが住んでいる。もともと土がやせているので農作物を作るために森の木々を切り倒し、その結果、侵食された川岸は泥で埋まり、カバの生息地が壊されてしまった。
人びとは生き残ったカバを保護するために、地域共同体で運営するカバ保護区をつくったということだ。
2004年ガーナ観光局は、この事業に年間地域振興費を送ったという。
ウェチアウの地域社会は、年間管理計画をたて、保護区の自然資源調査のためにボランティアを募ったということだ。ボランティアはカバが食べる植物の植生調査を行い、荒廃した土地の回復に力を貸したりしながら、生態系保護の大切さを学んでいく。
保護区の開発に関しては、3つの部族の長たちが定期的に会合をもって、どんな些細なことでも決定するために話し合うという。このプロジェクトは、人間と野生の生きものたちとのあり方に、ひとつの方向性を示している。
この夏、ガーナに友人ができた。友人を通して生のガーナ情報が送られてくる。遠いアフリカが彼女のおかげで、ぐんと近くなった。
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